2018年5月1日火曜日

ことばと文化10「お風呂が沸きました」




英語でどう言う?


いつ頃からか、家電というものが、やたら親切になった。洗濯が終われば、教えてくれるし、冷蔵庫を開けっぱなしにすると、ピーピーと注意してくれる。また、お風呂は、ボタンひとつで、「お風呂が沸きました」と教えてくれる。音楽まで流れるものもあるようだ。




ふと、これを英語でどう言うのか、気になった。最近は自動翻訳の精度が上がっているということなので、まずはいくつかの翻訳サイトで調べてみた。すべて、「お風呂が沸きました」からの英訳だ。


サイト
英訳
英訳からの日本語訳
グーグル翻訳
The bath got boiled.
お風呂が沸騰しました。
エキサイト翻訳
The bath got excited.
風呂はエキサイトした。
Infoseek マルチ翻訳
A bath was heated.
浴室は暖められました。
Bablylon翻訳
Hot tub is boiling
ホットタブ茹でました。


いずれも、風呂場がたいへんなことになっている ; ̄ロ ̄)!!


日本語の「沸く」には、「沸騰させる」という意味のほか、「(風呂が)適温まで温められる」という意味がある。一方、英語で「沸く」にあたるboilは、「液体が泡立って蒸気を出す」という意味※。日本の風呂を知らない外国人が聞いたら、びっくりするだろう。 




通じるように訳せばいいわけではない



ウェブでも見てみたが、単純に「風呂が沸いた」ことだけを表現するのであれば、こんな言い方でいいのではないか。


The bath is ready.


一方、初めて日本の風呂に入る人の場合、これで通じるだろうか?


通常、日本以外で風呂の入り方は、ホテル式。自分で湯を張り、終わったら湯を抜く。また、湯船にゆっくりつかるとか、ふろの湯で体を洗うといったやり方も、日本独特のものだ。(もしかしたら、他にもそんな国があるかもしれませんが、限られているでしょう)日本以外では、通常はシャワーですませる人が多いだろう。





では、「お風呂に入ってください」という表現にしたら、どうだろうか。いくつかの表現が考えられる。


Please take a bath.

Please go ahead and take a bath.

You can take a bath now.


言い方にもよるが、3つ目の表現などは、ちょっと命令にとられたりするかもしれない。日本の風呂の入り方を知らない人に対しては、基本的なことから伝えるのが必要なのだ。



訳すことは文化を伝えること



「風呂が沸く」以外にも、日本語にはそのまま英語に訳せない表現がいくつかある。もうひとつ、「米を研ぐ」を見てみた。


サイト
英訳
英訳からの日本語訳
グーグル翻訳
Sharpen the rice
米を磨く
エキサイト翻訳
Rice is sharpened.
米は尖らされる。
Infoseek マルチ翻訳
I polish rice
私は、米をみがきます
Bablylon翻訳
To sharpen the U.S.
米を研ぐ


いずれも、包丁を研いだり、宝石を磨くような表現になってしまっている。もう少し気を利かせて、「wash rice」と言ってみても、日本人の米の研ぎ方を正確に伝えることはできないだろう。


結局、それぞれの国には独自の文化があり、外国語にするときは、その内容や背景までも伝える必要があるということだ。



翻訳できない世界の言葉



少し前に話題になった本で、「翻訳できない世界の言葉」という絵本がある。フランス人のエラ・フランシス・サンダースさんというイラストレーターの方の著作。世界各国のそれぞれの国独自の表現108種類を取り上げており、日本からは「わびさび」「木漏れ日」「積んどく」「ボケっと」の4つが入っている。


私も一冊持っているが、世界のいろいろな文化を知ることができ、興味深い。文化というものは、一言で言い表せない奥深いものであるということを、改めて知らされる。







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