発音はうまいほうがいいけれど…
英語の音が分からなければ聞き取れない。聞き取れなければ、会話が成立しない。また、正しく発音しなければ、言いたいことが通じない。これは当然のことで、正しい発音を勉強し、身に着けられるに越したことはない。
私自身もそう信じ、英語の発音については、いろいろ勉強した。日本人だから限界はあるが、勉強と練習で何とか少しでもうまくなろうと努力したわけだ。たとえば、短母音と長母音の長さの比率は1:1.6とか、cars と cards、year と ear、juice と Zeus の発音の違いとか、かなりディープにこだわって練習したものだ。
しかし、ある経験を通じて、実は発音は二の次でいいのではないかと思うようになった。ここでその話を紹介したい。
カタカナ英語でペラペラ
過去の職場で、ある人が英語を話すのを聞いたときである。海外の人と電話をしていたのだが、見事と言っていいほどのカタカナ英語であった。しかし、表現は的確で、発音を除けば、まさに流暢であった。
その人はアメリカの一流の大学院を優秀な成績で卒業しており、英語を自由に操れるのは当然のことではあった。しかし、「発音も含めての英語力」という私の考えは、この時にひっくり返されてしまった。
さらにその人は、長年LとR、VとBの発音の違いを認識していなかったとのこと。なぜ分かったかというと、ある時、valve(弁)とbulb(球根、電球など)の発音を区別できていないことを指摘されたからだそうだ。
日本語でカタカナにすれば両方とも「バルブ」だが、英語の発音は全く違う。ちなみに発音記号はそれぞれ、[vælv]、[bʌlb]で、VとBだけでなく、「ア」の音も違う。
しかし、その人はアメリカの大学で勉強していたころから相当長い間、こうしたことを気にせずとも全く問題がなかったようだ。さらに、ご本人が正しい発音を知らなくても、「聞き取り」にも支障がなかったわけだ。
会話は文脈の中で成り立つ
これは、会話というのは、純粋に音だけを聞き取って成立しているものではなく、話の流れの中で成立していくということだ。例えば、英語で花の話をしていて、種から育てるのかと聞かれ、「バルブです」といえば、これがカタカナ発音であろうが、「bulb」と聞き取ってもらえるはずだ。
それでは、まったくのカタカナ発音でいいかというと、やはりクリアすべき最低のラインというものはある。実は、重要なのは、むしろ音自体よりも、正しいアクセントで発音することだ。
マクドナルドを正しく言える?
関東ではマック、関西ではマクドというのが通称だが、ニュースなどでは、「日本マクドナルド」というように、省略しない形で呼ばれている。厳密ではないが、発音を文字の大小で表してみると、マクドナルド(低・高・高・高・低・低)というような形になる。では、実際の英語の発音はどうだろうか。
日本語のカタカナのまま「マクドナルド」と言っても、ほとんどの外国人には通じないであろう。実際の発音はアメリカ英語で、[məkdάnldz](McDonald’s)。近いカタカナに置き換えると、マクダヌルヅとなる。
母音・子音の音の違いもさりながら、アクセントの位置が日本語と全く違うのだ。そして、アクセントの位置を正しく発音すれば、たとえ母音・子音がカタカナ発音でも、通じる率は格段にアップする。
どのように覚えるか
新しく覚える単語であれ、すでに外来語として使っている単語であれ、アクセントを正しく覚えておくことは重要だ。
日本語になっている英語について、確認してみるのもいいのではないだろうか。野球のベースボールは「ベイスボール」、旅券のパスポートは「パスポート」のように、太字のところを強く言う。今はインターネットで正しい音が聞けるので、自分の知っている発音と比べてみるのも面白いだろう。
おまけ
英会話をしていて、カタカナで知っている英語を言っても通じないとき、アクセントの位置を変えてみると通じるかもしれない。それでもだめなら、いっそのこと単語のスペルや、絵をかいたりしてもいい。要は通じればいいので、聞き取ってもらえないからと言って、あせることはない。
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