パスタと呼ばれるようになったのは?
30年ほど前まで日本では、「パスタ」という言葉はほとんど使われていなかった。当時イタリアの麺類として知られていたのは、スパゲッティとマカロニくらい。また、調理の種類も限られていた。スパゲッティはナポリタンかミートソース。マカロニはサラダのみ。
バブル期にイタリアの文化が人気になるにつれ、パスタという言葉が浸透していったようだ。また、イタリア料理店が増えるにつれ、カルボナーラやたらこスパゲッティ、ペペロンチーノなどが知られるようになった。
パスタの意味
パスタはイタリア語で
pasta。語源はラテン語の pasta で、小麦粉と水、塩を練ったもの、と言う意味。現在のイタリア語では、大きく分けて、4つの意味がある。
1.
スパゲッティなどのいわゆるパスタ
2.
小麦粉を練ったもの(パスタやピザの生地)3. 小麦粉の焼き菓子
4. その他、食品に関わらず練ったもの(練り歯磨きなど)
英語で言えば、それぞれ、pasta、dough、pastry、paste となる。イタリア語のパスタという言葉には、意外に広い意味があった。
パスタの起源
中国からシルクロードを渡ってきたとか、マルコポーロが伝えた、という話があるが、あくまでも俗説。
記録によれば、古代ローマにも小麦粉を練った食べ物があり、紀元前100年ころには、今のラザーニャのようなものが作られていた。また、麺の形は、アラビア人から伝えられ、12世紀半ばくらいから食べられるようになったらしい。
大航海時代に新大陸からトマトが伝えられたが、気候が適した南イタリアで栽培され、トマトソースのパスタが生まれた。その後、18世紀の産業革命で、麺を作る機械ができ、世界で広く食べられるようになったとのこと。
パスタの普及に貢献したのは、マルコポーロではなく、むしろコロンブスだったわけだ。
参考:
パスタの歴史(日本パスタ協会)食の歴史その17~パスタのルーツは中国か?~
Breve storia delle pasta
ちなみにトマトはイタリア語で
pomodoro(ポモドーロ)。「黄金のりんご」という意味だ。この言葉には、イタリア人のトマト愛が感じられる。
アルデンテはいつから?
今では誰でも知っている「アルデンテ」という言葉。スパゲッティであれば、少し芯をのこして、歯ごたえを残した茹で方。イタリア語は al dente で、dente はまさに「歯」と言う意味。
日本はもともと、米でもうどんでも、芯を残さず、しっかり調理するのがふつう。以前はスパゲッティもうどんのように、柔らかくゆでるのが当たり前だった。
アルデンテを日本に紹介したのは、あの落合務シェフ。イタリアで料理の修行を積んだ後、1981年にオープンした「グラナータ」というレストランで、アルデンテのパスタを出すようになったということだ。
当初は日本人には受けなかったが、社長のアドバイスもあり、アルデンテを出し続けた。やがて、イタリア人の常連客がつき、「イタメシ」ブームとも相まって、日本中に広まっていったとのこと。
落合シェフがいなかったら、日本人は今でもうどんのように茹でたパスタを食べていたかもしれない。
参考:挑戦者の原動力
ほかの国のパスタ
「パスタ」の本場はイタリアだが、他のヨーロッパにもオリジナルなものがあるようだ。
以前スペインに旅行したとき、パスタのパエリアを食べたことがある。お米の代わりに使われているのは、fideo(フィデオ)という、スパゲッティを短く切ったようなパスタ。
(注) フィデオの写真がなかったので、お米のパエリアです。
このほか、lluvia(ユービア=雨)と言う名前の乾燥パスタも見かけた。これは、雨粒のようなつぶつぶの形をしたもの。fideo も lluvia もスープで食べることが多いようだ。
イタリア語のウィキペディアに、いくつかイタリア以外のパスタが紹介されている。ドイツのラビオリ風パスタ
Maultaschen(マウルタッシェン)や、オーストリアの Knödel(クネーデル)など。麺類は、中国・日本がひとくくりで、「アジアのパスタ」としてランクイン。
おまけ
歯磨き粉はペースト状。だから、英語は
toothpaste だし、イタリア語も、(pasta)
dentifricio。なのに、日本語は歯磨き粉。もともと粉末状だったので、その名残りだとか。「練り歯磨き」というと、何だか古臭いですね。
もう一つおまけ
英語にも dentifricio に似た単語がある。dentifrice で、「歯磨き剤」と言う意味。言葉としては、toothpaste や toothpowder のほうが一般的とのこと。英語にも「歯磨き粉」があったのね。
0 件のコメント:
コメントを投稿