2018年5月21日月曜日

ことばと文化13「英会話の極意 2」





日本語で英会話



以前、英語が話せない日本人が、英語しか話せない人と会話を成立させているのを目の当たりにしたことがある。


実はこの日本人はITのエキスパートであり、会話の内容のほとんどがプログラムに関してだった。プログラム用語は基本的に英語。だから単語を日本語でつないでも、相手に通じていたのだ。




これは、内容にかかわる単語をたくさん知っていれば、会話力に問題があっても、なんとかなる例だと言える。そして、意思疎通という点で実は、根本的な要素がある。



相手が聞きたくなるように話す




それは、会話の相手に「聞きたい」と思わせることだ。

同じ日本人どうしでも、話していて楽しい人がいる一方で、話がかみ合わなかったり、話のテンポが合わない人がいる。たとえば、自分に興味のない話をくどくどされたら、だんだん「話半分」に聞くようになるのではないだろうか。逆に自分にとって面白い話をしてくれる人であれば、一生懸命耳を傾けるはずだ。


英語で会話する場合も同じで、相手にとって意味のある話をすれば、発音がまずくても、文法が間違っていても、一生懸命聞いてもらえ、話をくみ取ってもらえるだろう。



コミュニケーションというものは、言葉だけで成り立つものではなく、むしろ、言葉そのもので伝えられる情報は限られているという話がある。メラビアンの法則と言われるもので、言語だけで伝わる情報は何と7%しかないということだ。


言語情報(Verbal:7%):話の内容、言葉そのものの意味

聴覚情報(Vocal38%):声の質・速さ・大きさ・口調

視覚情報(Visual: 55%):見た目・表情・しぐさ・視線




言葉や会話力に限りがあっても、ジェスチャーや表情、声の調子などで、言葉以外の多くが伝えられるということだ。



心で聞く




これは、伝えることだけでなく、相手の話を理解する場合も同様だ。

私の経験では、英語を使う相手はほとんどがノンネイティブだった。英語のレベルはさまざまで、アメリカ人・イギリス人並みに話せる人もいれば、発音にくせがあったり、かなりユニークな文法で話す人もいた。


しかし業務上では、何度も聞き返すことなく、正しく情報のやり取りをしなければならない。そこで、私が心掛けたのが「心で聞く」ということだ。



「心で聞く」とはどういうことか。これは、まず話の本筋をしっかりと把握しておくことから始まる。そしてまさに、メラビアンの法則が当てはまるのだが、相手の様子も加味しながら理解していくということだ。何かを依頼したいのか、指示したいのか、どんな感情で話しているのか。


そして重要なポイントは、話を先読みしながら聞いていくことだ。実は日本語では無意識にできていることなのだが、外国語となったとたんに構えてしまい、できなくなってしまう人が多いのではないかと思う。


会話の際にリラックスしているかどうかで、聞き取れるレベルもかなり変わってくるにちがいない。



おまけ



国際結婚のご夫婦で、お互いの言葉が分かる場合、それぞれの言葉で会話する人たちがいる。たとえば、ご主人がアメリカ人で、奥様が日本人の場合、ご主人は英語、奥様は日本語で話す、といった具合だ。




完全なバイリンガルの人でない限り、相手の言葉で話すことは、アウェイで試合するようなもの。やはり母国語でないと、言いたいことの機微や感情を、正確に表すことは難しい。


逆に言えば、母国語でない言葉で話す、ということは、程度の差はあれ、言いたいことをシンプルに置き換えざるを得ないということだ。細かいことを切り捨てて、内容に集中すれば、母国語以外の言葉で話すことが、ぐっと楽になる。






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