2018年3月29日木曜日

イタリア語なるほどメモ15 「春が一番」




みんな春が好き


「女心と秋の空」と言うが、春もなかなか気まぐれな季節だ。急に汗ばむほどの気温になってみたり、思い出したように雪が降ってみたり。

 とは言え、アンケートなどでは、好きな季節の第一位はやはり春。寒かった冬が終わり、木々が芽吹き、色とりどりの花が咲き始める・・・やはり春は心躍る季節と言えるだろう。



ボッティチェリの「春」ウフィツィ美術館所有
実物見ましたが、大きくて迫力満点でした!

  
ラテン系の言葉では、春を表す言葉には「最初の、第一の」を表すPrim(n)という言葉が入っている。イタリア語、スペイン語は両方ともprimavera(プリマベーラ)、フランス語はprintemps(プランタン)だ。英語にも、principal(主な)や、primary(第一の、最初の)などの言葉がある。



私の疑問



イタリア語で季節を表す言葉は次の通り。


    
primavera
プリマヴェーラ
    
estate
エスターテ
    
autunno
アウトゥンノ
    
inverno
インヴェルノ


春と冬には共通して「ver」という文字が入っている。スペイン語では、夏のことを「verano」と言うので、「ver」は本来夏を表していたのではないかと考えていた。夏の前だから春は「primavera」。夏じゃないので、冬は「inverno」と考えるとしっくりくる。

 その一方、英語で「春の」を表す形容詞は、「vernal」。春分の日は「vernal equinox」だ。要は、暖かい季節全般を指すということなのだろうか。



語源を見てみよう!



ということで、がんばって、イタリア語のウィキペディアで調べてみた!




Primaveraの語源は、ラテン語の「vēr」。これは、サンスクリット語の「vas」(光り輝く)から来ている。


なるほど!確かに陽の光がどんどん明るくなる!



Estateの語源は、ラテン語の「aestas」(焼けるような熱さ)で、これは、ギリシャ語で「熱」を表す「aìthos」にあたるラテン語の「aestus」が変化したもの。

やはり夏は暑い!





https://it.wikipedia.org/wiki/Autunno

Autunnoの語源はラテン語の「autumnus」、元は「auctumnus」で、「増える、豊かになる」を意味するaugereの分詞「auctus」に、ギリシャ語で過去分詞形を作る語末の「mnos」をつけたもの。夏の後に、豊かな作物をもたらす季節を表す。

確かに!実りの季節!



ウィキペディアではよくわからなかったので、他のサイトを見てみました。
Etimoitaliano http://www.etimoitaliano.it/2015/01/inverno.html


Invernoは「寒い」を表すサンスクリット語の「him-」から来ている。これがラテン語の「hiems(冬、寒い、凍る)」や「him-ernum(時期としての冬?)」となり、「hibernum」という言葉になった。

ということは、「ver」は関係なかったのね。
寒いことが語源となっていることは、よくわかりました。

  

おまけ



英語のhibernation(冬眠)が、イタリア語のinverno(冬)と関係があったとは!
なるほど!(シロクマは冬眠しないらしいですが)



2018年3月25日日曜日

ことばと文化5「斜め読み」




英語は斜め読みできるのか?







かねてより、英語は日本語と比べて、斜め読みが難しいと考えていた。もちろん、母国語でないから、速読できないのは当然だが、その点とは関係なく、言語として、根本的に拾い読みに向かないと決めつけていたのだ。

その大きな理由は、英語が表音文字であること。日本語であれば、表意文字である漢字だけ拾い読みすれば、だいたいの意味をつかむことができる。また、漢字は基本的に画数が多い、すなわち文章の中の黒っぽいところに焦点を合わせればいいので、目を走らせるのも簡単だ。

次の二つの文を比べてみてほしい。


日本語の例(このブログの過去記事から取ってみました)

ある本に書いてあったのだが、聖徳太子の時代には、韓国語と日本語は相当似ていて、通訳を介さなくてもお互いに理解できたという。真実のほどは分からないが、確かに日本語と韓国語は今もよく似ている。言葉の進化が似ていたなら、イタリア語とスペイン語の違いくらいにおさまっていたのかもしれない。残念だ。

英語の例(上の文を簡単に英訳しました)

I read in a book that at the time of Shotoku Taishi Korean and Japanese could communicate without an interpreter as these languages were so similar. I am not sure whether it is true or not, however, Korean and Japanese are quite similar even today. If the two languages had evolved in a similar way the difference could have been like that between Spanish and Italian. It’s a pity.



両方とも自分の文だ。しかし英語のほうは、意味を表すものというより、記号の羅列に見えてしまう。これは画像として、メリハリがないことも原因ではないかと思われる。

スキミングとは?


ところが、英語にも、「斜め読み」に当たる表現があるのだ!skimming または skim reading。スキミングというと、クレジットカードなどの不正読み取りにも使われている。スープの上澄みを取る、アクを取るといった意味もある。

要は、表面をさっとさらうイメージの言葉だ。ということは、英語も「斜め読み」できる言語であることになる。





ウェブを調べてみたところ、英語の斜め読みの方法がいくつか見つかった。

1.  キーワードを拾って読む

2.  段落の最初と最後だけ読む

3.  段落の最初の文だけ読む


1.の方法は日本語と同じ。英語力が相当高くないと無理だ。2.は文脈が追えることが条件。そして3.の方法は実際にやってみると、なかなか効果的であることが分かった。インターネットの記事など、ざっと内容だけ知りたいときにはこの方法が役に立ちそうだ。


おまけ


英語の斜め読みに関する記事を検索している中で、「逆に日本語は斜め読みがしにくい」という意見も見受けられた。文末まで読まないと、肯定なのか否定なのかわからないからだという。

 我々が日本語を斜め読みするときは、いちいち文末まで気にしない。拾った単語の脈絡で大意をつかむことができるからだ。やはり母国語であることが斜め読みの一番のポイントなのかもしれない。

2018年3月22日木曜日

イタリア語なるほどメモ14 「略語」





実は略語のことばとは?


FIATが略語に由来することに関連して、ほかにも、普通の言葉のように使われている略語があることに気づいた。

日本語はとかく省略するのが好きな言語なので、特に驚かない。リストラ、プレハブ、シャーペンなど、すでに普通の言葉になっているものもたくさんある。

で、英語にもそうした単語がある。代表的なものが、laser(レーザー)だ。これは、普通名詞だと思っている人も多いのではないだろうか。

いくつか挙げてみる。



日本語
正式名称
意味
Laser
レーザー
Light Amplification by Stimulated Emission of Radiation
輻射の誘導放出による光増幅
Radar
レーダー
Radio Detection And Ranging
無線検出および測距
Scuba
スキューバ
Self-Contained Underwater Breathing Apparatus
自給気式潜水器
ZIP
Zip Codeで郵便番号
Zone Improvement Plan
(アメリカの)郵便集配区域改善計画




略語の正式名称は?

一方、略語と認識されながら、意外に正式名称が知られていないものもある。
例えば、AMPMBCADはどうだろうか。

このAMPMは実はラテン語。

AM    Ante Meridium (正午の前)
PM     Post Meridium (正午の後)

BCADはちょっとややこしい。

BC      Before Christ (英語、キリストの前)
AD     Anno Domini (ラテン語、主の時代)

これはあくまでも英語表記であり、イタリア語では、aCdC

aC      Avanti Cristo(キリストの前)
dC      Dopo Cristo(キリストの後)



AC/DCというと、電気の言葉の言葉ほうがよく知られていますね。


AC      Alternate Current(交流)
DC      Direct Current(直流)


おまけ


AMPMで使われているラテン語のAnte(前に)、Post(後に)は、接頭辞として覚えておくと役に立つ。英語ではAnticipate(期待する)や、postscript(追伸)などがある。

イタリア語ですぐに思い浮かぶのは、antipasto (アンティパスト=前菜)。「パスタの前」なのに、なぜ pasto ? と思っていたら、pastoはラテン語で「食事」の意味だそう。前菜は食事じゃないということか?




あの落合シェフのLa Bettolaでいただいた前菜盛り合わせ(antipasto misto

2018年3月18日日曜日

ことばと文化4「若者言葉」




今どきの若い者は・・・


最近ツイッターで、「今どきのワカイモンは」という漫画が人気らしい。
ご興味のある方はこちらからどうぞ。https://twitter.com/kakikurage

人気の理由は、いい意味で裏切られる内容であること。ネタばれになってしまうが、上司が、「今どきのワカイモンは」と言いながら、若い部下を慰めたり、ほめたりしてくれる。

普通は、「今どきのワカイモンは」と言えば、けなされたり、叱られたりするものだ。特に、若者言葉に対して、年配者は否定的。自分が若い時代には言われる立場だったことも忘れ、「言葉遣いがなっていない」とか、「意味が分からない」などと批判する。



許容範囲はどこまで?


言葉というのは生き物であり、常に変化を遂げている。新しい表現や言葉が否定され続けてきたならば、我々はいまだに古代の日本語を使っていたであろう。




若者言葉や流行語はほとんどが一過性だが、中には生き残っていくものもある。ら抜き言葉や、「チョーXXX」などは、すでに口語では日常的なフレーズになっている。今は眉をひそめられるような言葉のなかにも、やがて当たり前の表現になっていくものもあるだろう。

だから、頭ごなしに若者言葉が悪いとは言えない。かつての若者世代としては、時代文化の一現象ととらえ、客観的に見ているのがよさそうだ。


なぜ若者だけが新しい言葉を作るのか?


ウェブ検索したところ、いろいろな意見があった。

・自分の感情をぴったり表現できる言葉が既存のものにないから
言葉のルールを分かっていないから
新しいものに興味が強いから
仲間だけに通じる表現でつながっている感覚を持ちたいから

どれもそれなりに、当たっていると思う。で、私としては、若者が新しい言葉をどんどん作り出すのは結局、「作り出す能力があるから」に尽きるのではないかと思っている。


若者じゃない人は?


若者以外の世代は、残念ながら、若者ほど新しい言葉を作り出す能力はなさそうだ。新しい言葉に拒絶反応を覚えてしまうのは、それもひとつの理由ではないだろうか。

一方人は、年を重ねるにつれ、語彙が豊かになっていくものだ。若者が知らない、奥ゆかしい日本語表現なども、たくさん知っているはずだ。若者があまり知らない言葉であっても、どんどん使ってみるのはどうだろう。

若者が分からないことを馬鹿にするのではなく、日本語の粋な表現を次の世代に伝えていくことにより、より豊かなコミュニケーションがとれるようになるのではないだろうか。


ウィキペディア「若者言葉」 参考にさせていただきました。

  

おまけ


ある本に書いてあったのだが、聖徳太子の時代には、韓国語と日本語は相当似ていて、通訳を介さなくてもお互いに理解できたという。真実のほどは分からないが、確かに日本語と韓国語は今もよく似ている。言葉の進化が似ていたなら、イタリア語とスペイン語の違いくらいにおさまっていたのかもしれない。残念だ。



法隆寺

2018年3月15日木曜日

イタリア語なるほどメモ13 「クルマ」





クルマ産業とは?


まず最初に、全世界で車メーカーのある国がいくつあるか、ご存じだろうか。部品製造や組み立ての会社ではなく、独立して車本体の開発・製造を行う企業のある国のことだ。

そう聞かれて考えてみると、意外に少ないことに気づかれるのではないか。早くから製造を行っていたのは、アメリカ、ドイツ、イタリア、フランス、イギリス、スウェーデン、日本。少し遅れて韓国、中国。最近インドも加わった。



クルマは世界中で走っているのに、製造メーカーのある国はわずか10ヵ国。これは、車というものが特に高度な技術を要するためだ。部品の数や製造工程が膨大、それらがすべて完璧に組み合わさって、安全が担保される。

さらにデザインや性能も重要な要素だ。最近は車離れが進んでいると言われるが、今でも世の多くの人々にとって、かっこいい車はあこがれの存在だ。


あこがれのイタリア車




車好きにはイタリア車ファンも多い。FerrariLamborghiniMaseratiAlfa RomeoDe TomassoLancia。どれも高性能でスタイリッシュなイメージだ。そしてこれらの社名・車名は、創業者や開発者の名前に由来している。

ところで、この名前を聞いて、車好きの人であれば、ひとつ大事なメーカーが抜けていることにすぐ気づかれるであろう。

そう。イタリアを代表する車メーカーのフィアット。今や幅広い産業に事業を拡大し、またクライスラーとの提携など、国際的にビジネスを展開するイタリア最大のコングロマリットだ。

今回紹介したかったのが、このFIATという名前。(前置きが長くてすみません)他のイタリア車と異なり、人の名前ではない。地名や、何かを意味する単語でもない。実は略語だ。

Fabbrica Italiana Automobili Torino (トリノのイタリア自動車製造所)
この頭文字、FIATをとったもの。

単に「フィアット」と覚えていた時は、何となくイタリア語のような気がしていたが、確かにこのスペルはイタリア語的でもない。とは言え、立派な社名であることは変わらない。正式名称はFIAT S.p.A.だ。

略語はイタリア語で acronimo(アクロニモ)という。英語ならacronym(アクロニム)。アルファベット23文字の略語、たとえば、AMPMSNSなどであれば略語であることはすぐわかる。

一方、FIATのように、4文字以上あって、単語のように発音されるものは、略語とは気づかないものだ。英語にもそんな意外な略語がいくつかあるのだが、これは別口で書いてみたいと思う。


おまけ


FIATに似たイタリア語の単語で、fiato (フィアート)というのがある。これは「息」という意味。


もう一つおまけ


FIATはトリノが本社。トリノと言えば、あの荒川静香さんが金メダルを取ったトリノオリンピックが思い出される。今回の平昌オリンピックでも、トリノの話がよく出ていた。で、「トリノオリンピック」という言葉は、その抑揚のせいで、どうしても、「鳥のオリンピック」と聞こえてしまう。そして、なぜかニワトリが競技を行っているイメージが沸いてしまうのだ。