日本語は音が少ないので、英語など外国語の発音が難しい、と言われることがある。逆に、外国人にとっては、覚える音が少ないので、発音が簡単、と言う人もいる。実際のところ、日本語の音というのは少ないのだろうか。そして、そのために日本人は外国語の発音が苦手なのだろうか。
日本語の音はいくつある?
「日本語の音はいくつ?」と聞かれた場合、すぐに「50音」とか、「(んを入れて)51音」と答える人が多いのではないだろうか。場合によっては、や行やわ行にはない文字もあるから、それを引いて45音または46音と言うかもしれない。小学校で「50音表」というものを習うので、その言葉から何となく日本語の音は50音と思ってしまいがちだ。
実際のところ、50音表にしたがった数え方をすると、50音どころではない。濁音や半濁音、そして拗音(ようおん=ちいさな「ゃ」「ゅ」「ょ」をつけた音)があるからだ。
日本語の音の数は?
分かる範囲で日本語の音を表に書き出してみた。直音が71、拗音が36、外来語表示の拗音が25で、合計は何と132もあった!外来語表示の特殊なものを入れると、もっとあるかもしれない。
直音(清音)
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直音(濁音)
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あ
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い
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う
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え
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お
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か
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き
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く
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け
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こ
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が
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ぎ
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ぐ
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げ
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ご
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さ
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し
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す
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せ
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そ
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ざ
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じ
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ず
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ぜ
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ぞ
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た
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ち
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つ
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て
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と
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だ
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ぢ
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づ
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で
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ど
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な
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に
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ぬ
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ね
|
の
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は
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ひ
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ふ
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へ
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ほ
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ば
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び
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ぶ
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べ
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ぼ
|
ま
|
み
|
む
|
め
|
も
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ぱ
|
ぴ
|
ぷ
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ぺ
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ぽ
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や
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ゆ
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よ
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ら
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り
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る
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れ
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ろ
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わ
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を
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ん
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拗音
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きゃ
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きゅ
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きゅ
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ぎゃ
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ぎゅ
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ぎょ
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しゃ
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しゅ
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きょ
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じゃ
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じゅ
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じょ
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ちゃ
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ちゅ
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ちょ
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ぢゃ
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ぢゅ
|
ぢょ
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にゃ
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|
にゅ
|
にょ
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||||||
ひゃ
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ひゅ
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ひょ
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びゃ
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びゅ
|
びょ
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|||
みゃ
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みゅ
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みょ
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ぴゃ
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ぴゅ
|
ぴょ
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|||
りゃ
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りゅ
|
りょ
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その他の拗音(外来語表示)
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ウィ
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ウェ
|
ウォ
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ヴァ
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ヴィ
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ヴェ
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ヴォ
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|||||
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シェ
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||||||
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ジェ
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||||||
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チェ
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ツァ
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ツィ
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ツェ
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ツォ
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ティ
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テュ
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ディ
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デュ
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トゥ
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ドゥ
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ファ
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フィ
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フェ
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フォ
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フュ
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正確な音の数え方とは?
言葉が持つ音の数というのは、「音素」として数えるのが正しいとのこと。音素と言うのは、母音と子音の種類を数えたものだ。数え方にはいろいろな方法があり、正確な数字はないようだが、Wikipediaでの数え方は次の通りで、23音となる。
種類
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音
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数
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母音
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a, i, u, e, o
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5
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子音
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k, s, t, c, n, h, m, r, g, z, d, b, p
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13
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半母音
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j, w
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2
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特殊音
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n (「ん」の音)q(つまる音)h(のばす音)
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3
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合計
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23
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他のサイトも見てみたが、だいたい日本語は20音くらいと言えるようだ。英語は45音くらい。音素の数で行くと、確かに日本語の音は英語の音よりだいぶ少ない。
ちなみに、音素が一番多い言語はアフリカのブッシュマンが話す言葉で、何と200種類くらいある。アフリカから離れた地域ほど音素の数が少なくなるという説があり、南アフリカのXu語は141、タンザニアのHadza語やナイジェリアのIgbo語は59。ヨーロッパに行くと、フランス語やドイツ語の音素が約40、アジアでは中国語や韓国語が約30だ。そして日本の約20からさらに東に行ってハワイ語になると13種類だけしかない。
ただし、インドネシアにも音素の少ない言葉があるそうで、この説はかならずしも正しいとは言えないようだ。とは言え、世界の言語の中で日本語の音素というのはかなり少ないほうであることは確かだ。
音素が少なければ発音は簡単なのか?
「日本語は音の種類が少ないから、外国人にも発音が簡単」とよく言われる。しかし、私はこれを聞くたびに「本当にそうだろうか?」と思ってしまう。なぜなら日本語に独特な発音は、日本語を母国語としない人にとってはかなりむずかしいと思えるからだ。
例えば、英語を母国語とする人の場合、よほど日本語の発音に長けている人でない限り、日本語の母音や子音を英語の音で発音する。例えば、TやDなどは日本語本来の発音に比べて破裂の度合いが強いし、Rなどは、舌を丸めてこもったような音になる。日本語の「シ」の音も、英語の「si」や「shi」の音になり、日本語の柔らかい音とは異なる。
また、母音も英語の音になる。例えば英語になっている日本語で比べてみると分かりやすい。「すし」の「す」の音は日本語の「ウ」の音に比べ、唇を丸めて深い「ウ」の音になるし、「とうふ」の「とう」は、日本語の本来の発音の「とー」ではなく、「go」の発音のような「ou」になる。
要は、それぞれの言語が持つ発音は独自のものが多く、母国語としない人にとっては、音素が多かろうが少なかろうが難しい、ということだ。だから、日本人だけが特に外国語の発音が苦手、ということはなく、どんな言語を話す人にとっても、外国語を正確に発音するのはたいへん、ということだ。
外国語を勉強するとき、発音がいいに越したことはない。また、人により、発音がうまい人とそうでない人がいるのも確かだ。しかし、発音が上手にできないからと苦手意識を持つ必要はないのではないか。外国の言葉というのは、うまく発音できなくてあたり前なのだから。
おまけ
スペイン語は母音が日本語と同じ5つなので、日本人にも発音しやすいと言われる。確かにスペイン語の母音は日本語と同じ「a, e, i, o, u」の5つ。もちろん、日本語の母音の音とまったく同じわけではないし、日本語にない子音の音もある。
だが、日本人が話すスペイン語は、英語ネイティブの人が話すスペイン語より聞き取りやすい、というのを聞いたことがある。TやD、S、Rなどの子音の音が英語より日本語に近いからではないかと思う。日本人に発音のアドバンテージがある言語があると思うと、うれしいものだ。
参考:
Wikipedia「音素」
Crisisboom:
Is
this how Eve spoke? Every human language evolved from ‘single prehistoric
African mother tongue’
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