イタリア語にも同音異義語がある
日本語は同音異義語が多い言語だ。これは、日本語の音の種類が少ないのに対して、言葉の種類が多いため。確実なデータは見つけられなかったが、日本語は世界で最も同音異義語が多いのではないか、と言われている。
英語も同音異義語は多いほうと言えるのではないだろうか。あるサイトでは、主なものとして、217組、462語の同音異義語が載っていた。「right」と「write」、「I」と「eye」、「there」と「their」など、中学生でも知っている単語も多くある。英語の場合、同じ音を表すのに、いろいろなスペルがあるのでこういった現象が起きるようだ。
一方、発音がスペルに厳密に対応しているイタリア語の場合はどうだろうか。実はタイトルの「内閣」と「トイレ」が同音異義語。イタリア語で、「gabinetto(ガビネット)」だ。
Gabinetto の由来
この言葉は、フランス語の「cabinet」に由来する。もともと「小さな部屋」を表し、これが、「キャビネット=家具」や「内閣=限られた人が話す部屋」といった意味に発展した。英語でも内閣を表す単語は、フランス語と同じスペルの cabinet。
また、イタリア語の gabinetto
の場合、「部屋」の意味合いから、「実験室」「研究室」といった意味もある。英語では、laboratory と lavatory は別の単語だが、イタリア語では、同じ gabinettoだ。
イタリア語の同音異義語
イタリア語で同音異義語は「omònimo(オモニモ)」。違う意味の単語で音が同じことを「omofonia(オモフォニア)=同じ音」と言い、違う単語でスペルが同じことを「omografia(オモグラフィア)」と言う。
スペルが違う同音異義語omofonia の例:
前置詞の a と「avere=持っている」の3人称単数現在の ha
「空」の cielo と「celare=隠す」の1人称単数現在の
celo
「盲目」の cieco と「チェコ人、チェコ語」の ceco
「雰囲気、そよ風」に定冠詞がついたl'aura と女性の名前の Laura
「蚊」の mosca と「モスクワ」の Mosca
スペルが同じ同音異義語 omografia
「(体の)頭」と「リーダー・ボス」を表す capo
「キビ(植物)」と「マイル」を表す miglio
「アナグマ」「くぬぎ(植物)」「(金融の)レート」を表す tasso
やはり、日本語や英語に比べて、イタリア語の同音異義語はだいぶ少ないようだ。
「桃」と「魚」は同じ単語?
イタリア語で「桃」は pesca
。Pesca には、「漁業」という意味もある。同じ単語に2つの意味があるのではなく、別の単語だ。スペルは全く同じだが、「e」の音が違う(pèsca と
pésca)。
もちろん、この2つの言葉は語源も違う。「桃」の pesca は、ラテン語の persico, percica(ペルシャの)が元で、これは桃の学術名ともなっている。「ペルシャのりんご」という言葉が起源のようだ。一方、「漁業」の pesca は、動詞 pescare(釣りをする、漁業をする)が元。pescare はラテン語で魚を表すpĭscis の派生形の pĭscari が語源。
実はスペイン語では「魚」は pescado で、pesca と語感が似ている。(イタリア語は pesce=ペシェ)。そして、スペイン語では桃は pesca ではなく、melocotón(メロコトン)と言う。私は実は、イタリア語より先にスペイン語を勉強していたので、「pesca」という単語を聞くと、どうしても「魚」を思い浮かべてしまう…。要は、イタリア語の「桃」とスペイン語の「魚」が似ている、ということでした。
なお、イタリア語の同音異義語に関するサイトでは、pesca のような微妙な母音の違いがある同音異義語として、約30の単語が挙げられていた。確かに日本語でも、「橋」と「箸」や「飴」と「雨」などは微妙に音が違うが、やはり同音異義語だ。
おまけ:日本語で一番多い同音異義語は?
広辞苑に載っている中で一番多い同音異義語は何と言う言葉でしょう?
答えは、「こうしょう」。
「交渉」「考証」「高尚」など、何と48種類ある。世界広しといえども、ひとつの音で48種類の意味の言葉がある言語は、ないのではないだろうか。
参考:
日本漢字能力検定協会「一番多い同音異義語は?」
La
Grammatica Italiana 「gli
omonimi」
Treccani「omònimo」
英会話オンライン「英語の同音異義語(homonyms)一覧」
What’s
in a Name 「モモ」
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