2018年12月19日水曜日

イタリア語なるほどメモ42「くしゃみ・鼻水・鼻詰まり」








  

くしゃみに対する決まり文句



外国の人といるときにくしゃみをすると、決まり文句を言われることがある。英語なら、「Bless you!」だし、イタリア語の場合は「Salute!」だ。


ドイツ語やオランダ語、フランス語やスペイン語にも同様の表現がある。調べたところ、くしゃみへ言葉をかけるのは、中世ヨーロッパが起源。3つの説がみつかった。


1.くしゃみをすると魂が抜けるので、悪魔に魂を奪われないよう、まじないとして言葉をかける

2.くしゃみは体の中から悪魔を追い払うので、再び入ってこないように、言葉をかける

3.ペストが流行った時期、その初期症状でくしゃみをすることが多かったため、ペストによるくしゃみでないよう、言葉をかける




英語やブレトン語、ウェールズ語などは、「神のご加護を」という表現だが、その他のゲルマン言語やラテン系の言葉はだいたい「健康」を表す単語となっている。悪魔を払うのに「健康!」と言うのもなんか変だな、と思ったら、やはりイタリア語のサイトで書いてあるのは、3.のペスト説だけだった。


いずれにしても、くしゃみへの声掛けは、相手のことを思いやることから始まったわけだ。とは言え、現在は単に習慣的に反応しているだけではないだろうか。アメリカなどでは公共の場所でくしゃみをしたら、周りから一斉に「Bless you!」と言われることもあるようだ。大音響サラウンドの「Bless you!」は、迫力モノではないかと思う。



病状や生理現象のことば



くしゃみを調べていて、イタリア語で生理現象を表す言葉をあまり知らないことに気づいた。考えてみれば、ふつうに語学の勉強をしていても、病気や生理現象の言葉はあまり覚える機会がない。中学英語でも「くしゃみ」や「せき」は習った記憶がない。旅行会話を勉強して、初めて「頭が痛い」や「おなかが痛い」という表現を知るようになるものだ。


これを書いている今は風邪の季節でもあり、「くしゃみ・鼻水・鼻づまり」を手始めに、病状を表す表現や生理現象の言葉を調べてみた。




風邪の症状


イタリア語
読み方
くしゃみ
starnuto
スタルヌート
鼻水
naso che cola
ナゾ・ケ・コラ
鼻づまり
naso chiuso
congestione nasale
ナゾ・キウーゾ
コンジェスティオーネ・ナザーレ
せき
tosse
トッセ
のどの痛み
mal di gola
マル・ディ・ゴラ
発熱
febbre
フェッブレ


イタリア語で「風邪」は「raffreddore(ラフレッドーレ)」。長ったらしい単語だが、「freddo(フレッド=寒い)」の派生語であると考えれば覚えやすい。イタリア語の Wikizionario でも風邪の主な症状として、「くしゃみ・鼻づまり・鼻水」と書かれている。(starnuti, congestione nasale, naso che cola sono i classici sintomi del raffreddore


病気の症状


日本語
イタリア語
読み方
頭痛
mal di testa
マル・ディ・テスタ
胃痛
mal di stomaco
マル・ディ・ストマコ
腹痛
mal di pancia
マル・ディ・パンチャ
歯痛
mal di denti
マル・ディ・デンティ


英語で病状の表現を習った時、「腹痛」が「stomachache」になるのが、どうも腑に落ちなかった。腹痛というのは下腹が痛む症状であり、胃が痛いわけではないのに、「stomach」というのが納得できなかったのだ。イタリア語では、「胃痛」と「腹痛」はそれぞれ別の表現なので、こちらは納得。なお、英語では「tummy ache」(おなかが痛む)という言葉もあるが、これは子供に使う表現とのこと。


その他の生理現象


日本語
イタリア語
読み方
げっぷ
rutto
ルット
あくび
sbadiglio
スバディッリオ
いびき
russamento
ルッサメント


日本に限らず、げっぷやあくびは人前ではしない方がいいようだ。また、イタリアでは人前で鼻をすするのもあまりよくないらしい。鼻が出たら、遠慮せずにかんだほうがいいだろう。





インフルエンザはイタリア語から世界に



インフルエンザという単語は、英語でも「influenza」で発音も「インフルエンザ」。あまり英語っぽくない音だとは思っていたが、これはイタリア語がもとだった!ただし、イタリア語の発音は「インフルエンザ」ではなく、「インフルエンツァ」となる。


「インフルエンザ」という言葉がイタリアで生まれたのは中世。ウィキペディアの日本語版では16世紀、イタリア語版では15世紀が起源と書かれている。当時はたびたび繰り返されるこの病の原因が特定されておらず、「星の影響によって引き起こされる」とされていた。この「影響」という意味の「influenza」がそのまま病名として使われるようになったわけだ。




この言葉は18世紀にはイギリスでもそのまま使われるようになった。一方、フランスでは、同じラテン語族であるのに、独自の「grippe」という言葉を生み出し、今でもそのまま使われている。



おまけ:語感



自分が日本人だからかもしれないが、日本語の「くしゃみ」と言う言葉は、実際のイメージとぴったり合っている感じがする。イタリア語の「starnuto(スタルヌート)」はくしゃみの勢いのよさが感じられないし、英語の「sneeze(スニーズ)」などは、むしろ鼻水がたれている感じがする。



日本語は世界の言語の中でも、擬音語・擬態語が多い言語と言われている。(一番多いのは韓国語らしい)音節が少ないことや言葉の成り立ちが、その背景にあるとのことだが、現象にぴったりな音の言葉を作るのが得意だったからとも考えられるのではないだろうか。



参考:
Wikizionarioraffreddore
https://www.goodcross.com/words/4182-2016

2018年12月4日火曜日

イタリア語なるほどメモ41「イタリア語でカメラは?」




写真機のカメラはカメラではない





「イタリア語でカメラは?」と聞かれたら、2つの答えの可能性がある。ひとつは、写真を撮るカメラを表すイタリア語。そしてもうひとつは、イタリア語の「camera」の意味。


イタリア語で写真を撮るカメラを表す単語は「camera」ではない。英語が cameraなので、そのまま通じそうな気がしてしまうが、これは別の意味を表す単語。イタリア語でカメラは、「macchina fotografica(マッキナ・フォトグラフィカ)」だ。


これは文字通り、「写真を撮る機械」ということ。このほか、「fotocamera(フォトカメラ)」という言葉もあり、イタリア語のウィキペディアではこちらの単語が見出しとなっている。


イタリア語の「camera」という単語は、実は写真機のカメラとも関係している。これは「部屋」という意味。英語や日本語で使われている「カメラ」は、この言葉が語源。カメラはもともとラテン語で「暗い部屋」を表す「camera obscura(カメラ・オブスクラ)」と呼ばれており、これが略されてカメラという言葉になった。




グーグル翻訳で見てみたところ、世界的には「カメラ」という言葉が優勢のようだ。イタリア語以外で「カメラ」ではない言い方をするのは、フランス語の「appareil photo」や、スペイン語の「máquina fotográfica」など。ただし、フランス語にも caméra という単語があり、スペイン語では、cámara(カマラ)や、cámara fotográficaという言葉も使われている。



camera」には「部屋」以外の意味もある



camera」という単語の語源は、ラテン語で「丸天井」を表す camĕra と言う単語。なぜ丸天井から部屋の意味に転化したのかは分からないが、天井があれば部屋であることは間違いない。




そして、camera には「部屋」のほか、議会の上院・下院といった「議院」の意味や、「商工会議所」などの「会議所」を表す意味もある。これは英語では chamber (of commerce) という単語になる。フランス語で部屋を表す単語は chambre なので、なるほど!と納得。



部屋を表す単語



イタリア語で部屋を表す単語は camera のほかにもいくつかある。調べてみたところ、camera は主として寝室を表し、salasalottosoggiorno はリビングルームや広間など、大きな部屋を表す。


stanza はラテン語の stantia(居住する場所)が語源で、一般的に部屋を表す言葉。一方、sala は、ゲルマン系ロンゴバルド語の sala(住居)が語源とのこと。どちらも「住む場所」を表していたものが、時を経て違うニュアンスに変わったようだ。




いろいろな部屋の表現をまとめてみた。


イタリア語
読み方
意味
camera
カメラ
主に寝室
stanza
スタンツァ
部屋一般
sala
サラ
広い部屋、リビングルーム
salottosalaの示小詞がついた言葉
salotto
サロット
soggiorno
ソッジョルノ
studio
ストゥディオ
書斎
cucina
クチーナ
キッチン
bagno
バーニョ
浴室、トイレ


具体的に「寝室」と言いたいときは、「camera da letto =ベッドの部屋」と言う。また、「soggiorno」には「居間」のほか、「滞在」という意味もある。ホテルの受付などで、「Buon soggiorno.(ブオン・ソッジョルノ=よい滞在を)」などと言われることがある。




ついでにホテルの部屋の言い方


イタリア語
読み方
意味
camera singola
カメラ・シンゴラ
シングルルーム
camera doppia
カメラ・ドッピア
ダブルルーム
camera matrimoniale
カメラ・マトリモニアーレ
スイートルーム


スイートルームの表現が「結婚の部屋」という表現なのが面白い。



おまけ



外国人の多い職場で働いていると、会話がルー大柴のようになってしまう。病欠を「シックリーブ」と言ったり、承認を「アプルーブ」と言ったり。社内ではいいが、社外の人と会話するとき、カタカナ語を乱発すると浮いてしまう。


それで、極力カタカナ語を避けるようにしていたら、「カメラ」というのも、つい「写真機」と言うようになってしまった。「写真機」というと、デジカメなどではなく、撮影者が布の中に入って撮影するような、アンティークなものが思い浮かんでしまう。ふつうに使われているカタカナ語を日本語にすると、何だかイメージも変わってしまうものだ。



参考:
Wikipediaカメラ」「Fotocamera
Wikizionariocamera」「sala」「salotto」「soggiorno」「stanza