学校英語の弊害とは?
学校英語についてはさまざまな批判や指摘がある。しかし、日本人が英語がダメと言われながらも、多少は英語が使えるのは、やはり学校で英語を教えてくれるからだ。私自身、特に留学したり語学学校に通ったりすることなく、何とか英語が使えるようになったのも、学校で勉強したことが役立ったからだ。
一方、当然ながら、学校での英語教育に改善できるところはある。たとえば、単語や例文を型にはめて教えるところ。学校で習う英語は点数で評価する。だから教える側・試験する側にとって、点数をつけやすくするシステムが取られていて、教科書に載っている通りの答えでないと不正解になってしまう。
結局、社会に出て、仕事で英語を使うようになっても、学校英語で覚えた訳語や訳文にしばられてしまうことになる。たとえば、頭の中で何とか正しい文章にしようとするあまり、結局うまくしゃべれなかったり、また英語が何とか使えても、不自然な表現になったりなど。これは、学校英語の弊害と言えるのではないだろうか。
たとえば、「teach=教える」と覚えているので、「電話番号を教えてください」と言うときに、「Can you teach me your
phone number?」などと言ってしまう。「teach」は学問や技術を教える意味合いなので、英語としては変。「Can/Could I have your phone number?」などがふつうの言い方だ。
「Can you teach me your phone number?」でも通じないことはないだろうが、「あなたの電話番号がどういうものか、説明してもらえますか」といったニュアンスで受け取られてしまうだろう。
「面白い」の言い方は?
もう一つの例として「面白い」という言葉がある。「面白い」を英語で何というか聞かれたら、たいていの人は「interesting」という単語がまず思い浮かぶのではないだろうか。「面白い本」でも「面白い人」でも「面白いパーティ」でも、単純に「interesting」を使ってしまいがちだ。
しかし、「面白い」の意味合いにより、使われる英語は全く違う。「興味をそそるもの」「面白おかしいこと」「楽しいこと」は、それぞれ別の表現になる。たとえば、「面白い芸人」を「interesting comedian」と言ってしまうと、笑わせてくれる面白さではなく、たとえば経歴などが変わっていて興味深い人、といったようなことになってしまう。
「面白い」を意味合い別に英語にするとだいたいこんな感じ。
「興味をそそるもの」
これは、interesting で正解。興味深い内容があるとか、それまで知らなくて興味をそそられる、といった場合に使われる。「面白い本=interesting book」「面白い考え方=interesting idea」など。
「面白おかしいこと」
笑ってしまうような面白さについては、funny
という表現がある。「面白いジョーク=funny joke」など。「滑稽な」と言う意味の comical という言葉もある。
「楽しいこと」
娯楽やパーティなど、楽しい時間を過ごす意味合いを表す英語は、amusing、enjoyable、entertaining
など。「わくわく楽しい」なら exciting。スポーツ観戦などの楽しさを表すのによく使われる。「パーティ、楽しかったです」と言いたいときは、形容詞にこだわらず、「I enjoyed the party!」などと言うのが自然だ。
「interesting」に注意
「interesting」という単語は、基本的に「面白い、興味深い」という意味だが、場合によっては、「びみょう」といったニュアンスで使われることもあるので注意が必要だ。誰かの意見に対し、はっきり賛成も反対もできないというときに使われたりすることがある。
これは、interesting に限ったことでなく、「Thank you.」や「Great.」など、ふつうはいい意味で使われる表現が、ネガティブな意味合いで使われることもある。もちろんだいたいは、表情や話し方で分かるものだ。
学校英語でも、通り一遍の訳語・訳文を教えるのではなく、時と場合により、同じ単語がいろいろな意味合いを持ったり、また一つの日本語がいろいろな英語の表現になることをもっとしっかり教えてくれたらいいのではないかと思う。
おまけ:私の失敗談
以前、ニューヨークのデパートで、急にトイレに行きたくなったことがある。売り場の人に場所を聞こうとして、口をついで出たのがこれ。
「May I borrow the
toilet?」
「borrow」は基本的には、一時的に借りて、あとで返すニュアンスなので、もちろんトイレを借りるときに使うのは変。また、「toilet」もダイレクトな表現なので、通じるが、適切な言い方ではない。誰かの家で、「トイレを貸してください」と言いたいときなら、「May/Can I use the bathroom / washroom?」などと言うのがふつう。
その頃はすでにそれなりに英語を使えるようになっており、「Where is the bathroom / washroom?」くらいの表現はふつうにできたのだが、なぜかこんなヘンテコな英語を口にしてしまった。切羽詰まっていたためか、無意識に話すと日本語の直訳になってしまうためなのかもしれない。
私が言った表現は、ネイティブにすれば、「便器をちょっと持って行っていいですか?」と言われたようなものだろう。日本語でもこんなことを言われれば、当惑するか、吹き出してしまう。その時の店員はおなかを抱えて大笑い。その後、公共の場所でトイレをさがす時は、英語に限らず、「どこですか」の表現を使うようにしている。